肩鎖関節脱臼(肩鎖関節損傷)
左のレントゲン写真を見ると、鎖骨の肩峰端と肩甲骨の肩峰との間が、隙間が開いたように見えますが、この隙間には、肩鎖関節の適合性を高める線維性の軟骨(関節円板、関節内線維軟骨板)が存在します。
肩関節や股関節のようにソケット状の関節では無いため、骨性の支持力は無く、関節の支持を靱帯や周囲筋肉に依存しています。
※ 肩鎖関節の役割
肩関節の骨格を構成している上腕骨と肩甲骨は、鎖骨により体幹の骨格との連結を成しえています。従がって、肩鎖関節は、上肢を支える唯一の骨格ともいえます。
この肩鎖関節を損傷すると、上肢を支える支柱を無くすこととなるため、当然に上肢全体が下垂し、肩関節を軸とした上肢の運動機能も著しく低下します。
また、上腕の運動に際し、鎖骨も連動して軸回旋や、胸鎖関節を軸とした上下前後の運動を行い、上肢を支えながら肩甲骨と上腕骨の連携がスムーズな動きとなるよう補っています。
このことからも、肩鎖関節が上肢の運動機能にたいする重要な役割を有していることが分かると思います。
※ 鎖骨の成長
身長に係わる骨(下肢や脊柱)の成長は、10代をピークに20才までに完了しますが、鎖骨は27〜28才ぐらいまで成長し続けます。そのため20代前半から徐々に身体の横幅(肩幅)が大きくなります。
肩鎖関節を直接接続しているのが、肩鎖靱帯(けんさじんたい)です。また、鎖骨の下縁には、円錐靱帯(えんすいじんたい)と菱形靱帯(りょうけいじんたい)が存在し、肩甲骨の烏口突起 (うこうとっき)と連結しています。この円錐靱帯と菱形靱帯を合わせて、烏口鎖骨靱帯(うこうさこつじんたい)と呼ばれることもあります。
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肩鎖関節損傷
1.肩鎖関節損傷の原因
肩鎖関節損傷のほとんどが、転倒して肩を突いたときに発生します。また、転倒した際に手や肘を突いて、肩鎖関節に介達的に外力が加わって起こることもあります。その場合は、損傷の程度が軽い場合が多く、肩鎖関節捻挫や肩鎖関節亜脱臼の方が完全脱臼よりも比率が高くなります。また、肩鎖関節や鎖骨外端部への 打撃など直達外力により起こる場合は、下方脱臼や後方脱臼など特殊な脱臼を生じることもあります。
レスリングや柔道など投げ倒す格闘技系スポーツに多く、 また、サッカー、ラグビーなどのコンタクトスポーツでも発生頻度が高くなります。その他日常では、作業中の転倒、転落、交通事故による肩周囲への打撃や圧迫などでも起こります。
2. 肩鎖関節損傷の病態 と症状
肩鎖関節損傷は、その病態により以下のように分類されます。
肩鎖関節捻挫
靱帯の断裂が全く無い、もしくは僅かな肩鎖靱帯の損傷のみで、鎖骨肩峰端の偏位(脱臼)は見られないもの。
肩鎖関節の圧痛、同側上肢挙上時の疼痛、同側肩部の圧迫(横向きで寝るなどしたとき)による疼痛などが症状として現れます。
肩鎖関節亜脱臼
肩鎖靱帯の断裂、あるいはそれに加えて、菱形靱帯や円錐靱帯の部分的損傷があり、鎖骨肩峰端が上方へやや転位(亜脱臼、不全脱臼)したもの。
完全脱臼では無く、鎖骨の肩峰端と肩甲骨の肩峰の連結が一部残存しているもので、鎖骨肩峰端の上方への転位(突出)は少ない。
症状は、肩鎖関節の圧痛、同側上肢下垂時の肩鎖関節部疼痛(腕の重みにより、損傷した肩鎖関節部に負荷が掛かるため)、同側肩部の圧迫による疼痛、肩鎖関節部の軽度階段状変形、鎖骨肩峰端の弾発性抵抗(鎖骨肩峰端を下方へ押し下げると上方へ持ち上がるように反発・抵抗する。)、同側上肢の運動時疼痛などがあります。
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肩鎖関節上方脱臼
肩鎖靱帯及び菱形靱帯、円錐靱帯の断裂、場合によっては三角筋や僧帽筋の鎖骨付着部にも部分的な断裂を生ずることもあります。
鎖骨肩峰端は、著明に上方へ脱臼し、肩鎖関節部の階段状変形が見られます。
安静時でも肩鎖関節に持続的な強い脱臼痛があり、2週間程度は寝返りが全くできないほど痛みます。
同側の上肢の運動は、痛みだけではなく、鎖骨と肩甲骨の動きが抑制されるために挙上が困難となります。
肩鎖関節後方脱臼
肩鎖靱帯の断裂、菱形靱帯と円錐靱帯の断裂または部分断裂、三角筋や僧帽筋の鎖骨付着部断裂または部分断裂を生じ、鎖骨肩峰端は後方へ転位します。
同側上肢帯の運動が困難となり、強い持続的脱臼痛を有します。
肩鎖関節下方脱臼
非常に稀れな損傷です。鎖骨肩峰端を棒などで強打されるか、事故などで強い打撃が加えられた場合に生じます。
肩鎖靱帯が断裂し、鎖骨肩峰端は下方へ転位します。菱形靱帯と円錐靱帯の断裂を伴うこともありますが、通常は断裂を伴いません。
3. 肩鎖関節損傷の病態別治療と予後
肩鎖関節捻挫
治療は、テーピングや三角巾などによる固定を2週間ぐらい行います。
腕立て伏せや重いものを持つなど、肩鎖関節に負荷を掛ける動作は、受傷後1ヶ月を過ぎるまで厳禁です。
約3ヶ月ぐらいは、鈍い痛みや違和感などを訴える場合もありますが、安静期間中に無理をしなければ、予後良好といえます。
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肩鎖関節亜脱臼
テーピングや三角巾、包帯などによる固定を3週から4週行います。
固定除去後は、負荷を掛けずに右肩関節の自動運動を行います。
2ヶ月以上経過したら、徐々に負荷を掛けて回復訓練を行います。
初期の処置や固定が不十分であったり、安静固定期間が短すぎると、鎖骨肩峰端上方偏位の亜脱臼状態で関節変形が不可逆的残存となります。また、固定方法や期間が充分であっても、年齢や体質、健康状態により、関節変形が残存するケースが見られます。
6ヶ月前後でしっかり力が入るようになりますが、亜脱臼位のまま固まった場合(陳旧性脱臼)は、新関節形成完成までは、関節不安定感などが残存します。この期間中にスポーツや労働に復帰する場合は、サポート的なテーピングを� ��う必要があります。
通常、1年以上経過すれば、亜脱臼位のまま固まっても、機能的に何ら問題ない状態になります。
※肩鎖関節損傷の固定のポイント
肩鎖関節損傷を起こすと、上肢を支える骨性支持を失うため、上肢が下へ下がってしまいます。その下垂した上肢の重量による牽引力が損傷した肩鎖関節をさらに解離するため、疼痛と脱臼感が強まります。
肩鎖関節に負担を掛けないようにするため、三角巾や包帯、テーピングを使って、患側(痛めた側)の上肢を体幹にしっかり固定することが大切です。
※ 新関節の形成
肩鎖関節の脱臼の程度があまりひどくなければ、完全に元の位置に戻らなくても、脱臼位のまま固まり、やがて痛みも消失して機能的にも日常動作ならば何ら問題の無い状態になります。これは、鎖骨肩峰端が少し上方へ転位した状態のまま周囲の組織が変化して新しい関節を形成するからです。
新関節の形成完了まで、早くても1年、程度によっては3年〜4年を要します。
新関節の形成完了までの間は、重たいものなどを持とうとすると、肩鎖関節で支えきれずに鎖骨外端が上にずれていくため、脱臼感や痛みが再発します。
重いものを持ったり、引っ張ったりする際の、鎖骨外端の違和感や痛みがなくなるまでは、適度に動かしてなじませながら無理をしないことが大切です。
肩鎖関節脱臼
通常は、手術適応といえます。単純な上方脱臼であれば手術をしない方法を選択する場合もあります。
以下に、単純な上方脱臼の手術をしない場合における経過を解説します。
手術をしない場合は、脱臼の整復を行い、鎖骨矯正帯や包帯、テーピングなどを用いて固定をします。
整復、固定をしても、関節変形が残存し、痛みもしばらく続きます。整復、固定の意味は、できるだけ正常位に近づけた状態で、新関節が形成され、患部が安定するのを待つためです。
固定期間は4週程度で、その後もテーピングや専用サポーターなどを用いて簡易固定を続けながら回復訓練を開始します。
6ヶ月以上の経過で、ある程度力が入るようになりますが、新関節の形成完成まで2〜3年を要します� �新関節が形成されてしまえば、変形した状態は残りますが機能的には、何ら問題ない状態に回復します。
尚、脱臼による鎖骨肩峰端の転位が非常に著しい前方脱臼や後方脱臼、下方脱臼、肩鎖関節内障(関節円板損傷)などを生じた場合は、手術を行わないと疼痛や機能的障害などの後遺症を残します。
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